高等研究部

セラミックス高等研究部における研究体制

21世紀に入った今、環境調和を基本にした科学・技術の進展によって循環型社会の構築に貢献し ていくことが求められています。そのためのセラミックス科学の新しい研究領域の開拓、研究成果を 産業の活性化に結びつける方策の検討及びセラミックス分野での国際ネットワークの構築を通じて、 国内外の共同研究を推進し、新しいセラミックス科学の創出に向けた独創的・戦略的共同研究を行うこととします。

本学のセラミックス関連研究部門の研究者を中核として、卓越した成果をあげている国内外の研究 者を招聘するとともに、COE教育部を修了し、更に国際競争力をつけようとする若手研究者を受け 入れた柔軟な組織とし、卓越した研究拠点の形成を目指します。

4研究部門の設置

環境・エネルギー問題などセラミック・材料分野としての重点課題を設定し、共同研究態勢で取り組んでいます。

環境調和材料部門

本部門は元素資源の有効活用を促進する「ユビキタス元素材料」や人体や地球環境に負荷をかける有害懸念元素を使用しない「グリーン元素材料」を創成する研究開発を進めています。 さらに、この代替材料研究を通じて、新しい材料設計法やプロセス技術なども提案しています。  特に、温室効果ガス排出量の削減や省エネルギー効果を発現する材料設計に向けて、熱伝導性や軽量性を制御した研究開発を重点推進します。

エネルギー応用材料部門

人類が模索する「持続可能な社会」の実現には、エネルギーを「つくる」「はこぶ」「つかう」全てのステージで環境負担を減らし、資源を保全し、効率化することが求められています。 その中でセラミックス材料に関わる科学技術は、エネルギー問題が抱える様々な課題を解決する材料として注目されています。
【エネルギー創製材料研究】
先進的なセラミックスのプロセッシング技術を生かして、発電効率の優れた新しい太陽電池や水素製造プロセスを開発します。
【エネルギー変換材料研究】
セラミックスが関わるユニークな化学反応性を精密制御し、燃料電池やリチウムイオン電池などのエネルギー変換材料・デバイス設計をします。

バイオマテリアル部門

体を支える骨の機能が低下すると様々な病気の引き金となります。高齢社会の今、骨を迅速に確実に再生する治療が極めて重要になっています。これを支援する、次世代材料が必要とされ、 「セラミックス」「ポリマー」「メタル」が融合したハイブリッド生体材料の知的基盤構築を進めます。とくに、表面形態や化学状態をナノレベルで調整するナノチューンテクノロジーを開発し、 細胞へ刺激を与えて積極的に生体機能を構築する機能へ結びつけるための基礎研究や、生体が作る簡明で巧妙な構造・機能から学んで新機能材料を創出する科学の研究を行います。

次世代材料部門

サステイナブルな安心社会を構築するために、環境にやさしい新規高機能材料の開発が早急に求められています。構造・物性・理論に関する材料科学や高温・高圧下における物質科学など、 諸分野における先進的な研究手法を集結し、新展開と連携の促進を企図します。 粒子表面を異種元素で被覆した粒子などの多様なナノ粒子・クラスターを作製し、ナノ接合界面のバリスティック伝導やエキシトン型超伝導、燃料電池のバイメタリック触媒など、 ナノ領域のヘテロ構造に起因する特異な物性に基づく新規材料、デバイスの創成を目指しています。 新規機能発現を目指して、全く新しい化合物を研究対象にしています。未知構造や三次元電子密度分布を解析する最新のX線結晶構造解析法や、エネルギーフィルタリングと収差補正機能を活かした 超高分解能透過型電子顕微鏡法で、原子配列を直接観察して不規則性を解明します。

若手プロジェクト (FY2012)

若手研究者が提案し、採択された研究課題を、一定期間、研究資金援助を受けて実施しています。

Project1: 次世代エネルギー用パワーデバイス材料⇒研究成果報告書

(目的)
本研究の目的はセラミックス薄膜作製技術を用い、高い熱伝導特性を有する絶縁回路基板を低エネルギープロセスで作製することである。 重量収率と体積収縮率に優れるPHPSを用いて金属基板上に緻密なアモルファスシリカ絶縁膜の製膜および膜厚を制御する技術の確立を目指す。 さらに、シリカ膜-金属基板界面の接着性向上や気孔の減少を目的として界面への有機分子の導入を行い、本複合基板において最適なアミノ酸の組み合わせ、分子量や導入位置を明らかにする。。
(研究内容)
PHPSを用いて金属基板上に絶縁性の緻密なアモルファスシリカ膜を室温にて合成し膜厚を制御する技術を確立する。緻密性を向上させるため、 シリカ生成反応の促進部位と金属表面との親和性向上部位を同時に有する有機分子を設計する。また、接着性に寄与するチロシンとOH基を有するセリンを組み合わせたペプチドを設計し、分子量や導入位置などの最適化をはかる。 シリカ層表面の平滑性やボイドの発生からペプチド介在の効果を評価する。以上のようにシリカ膜-金属基板界面制御を行った複合基板を作製し、絶縁破壊耐圧および熱伝導率を測定する。

Project2: 磁性・強誘電体ドメイン制御による新規熱電材料⇒研究成果報告書

(目的)
現在のエネルギー問題に対し、光・熱などの自然エネルギーを電気エネルギーに変換可能な材料開発が急務である。本研究では、Wiedemann-Franz則に従って 性能向上が測られてきた熱電材料において新たに磁性・強誘電体ドメイン制御という観点から導電率及び熱伝導率の独立制御を行い、高い変換効率を有する熱電材料を作製することを目指す。
(研究内容)
磁性元素を有する強誘電体における磁気・誘電体ドメイン制御と熱電特性(高い導電率、低い熱伝導率)の関係を明らかにすることを最大の目的とする。 以下の2項目を検討項目として、研究を進める。
1.Fe添加BaTiO3におけるFe添加量と熱電特性の関係
2.磁性強誘電体BiFeO3における熱電特性 

Project3: ナノ構造解析に基づいたスピン伝導物質⇒研究成果報告書

(目的)
本研究プロジェクトでは、省消費電力スピントロニクスデバイスの実現に繋がる、電気磁気効果を示すらせん磁気構造物質やスピン偏極電流機構に基づいた 磁気トンネル接合の開発を行うことを目的とする。これらの開発には先端的なナノ構造解析手法と高感度物性測定を基本とし、系統的かつ効率的な研究を行う。
(研究内容)
らせん磁気構造をもつ電気磁気効果物質の開発では合成した磁性遷移金属酸化物に対し、透過型電子顕微鏡による結晶構造解析および磁気構造解析を行う。 加えて、電場印加その場観察により、評価解析を行い、電場印加によりスピン伝導が生じ、磁気状態が変化する物質の開発を目指す。 強磁性酸化物薄膜を用いたスピン偏極電流の生成法の確立では、ナノ構造解析・電気伝導評価によりターゲット材料の設計および薄膜作製条件の確立を行う。 それにより室温以上での強磁性絶縁体薄膜によるスピン偏極電流生成の実証を目指す。

Project4: バイオインターフェースを制御する材料表面の創製⇒研究成果報告書

(目的)
次世代型骨修復材料を創出するためには、その表面でのタンパク質や細胞との反応を、材料からの働きかけにより高度に制御することが重要となる。 これまでの骨修復材料は、現象論的に開発が進められてきた。材料の生体に働きかける機能を飛躍的に向上させる足がかりとして、計算科学から予想される有利な構造を組み込むことを考え、新しい生体材料設計科学の創出を目指す。
(研究内容)
生体親和性の高いケイ酸カルシウムセラミックスを選定し、材料表面にタンパク質の吸着サイトとなるようなエネルギー状態を作り出す。計算科学との融合によるナノレベルでのチューニングを行う。 具体的には、ケイ酸カルシウムセラミックスに微量のリン酸等を導入することで、特異なエネルギー状態を作り出す。第一原理計算を用いて、分子軌道エネルギー準位や電子密度をシミュレーションする。 同時に、計算科学を用いて、これまで生体材料科学で提案されている表面相互作用の定量化を試みる。

Project5: 三次元細胞集合体を形成する足場材料⇒研究成果報告書

(目的)
本研究課題の目的は、三次元的な骨形成性細胞集合体作製への応用を見据えた、細胞との相互作用により分解および組織再生誘導効果を発現する足場材料の開発である。
(研究内容)
骨芽細胞が産生するプロテアーゼに反応して切断するペプチドを材料内にハイブリッド化することで、材料の分解の制御を試みる。一方で、材料を不織布構造に設計することで、三次元培養の実現を図る。細胞の挙動は、繊維のサイズや機械的物性に依存することが予想されるため、細胞―繊維間の力学的作用を解析し、最適な繊維骨格構造を見出す。

若手プロジェクト (FY2010-FY2011)

【エネルギー源イオンを巧みにあやつる!】
「プロトン」や「酸素イオン」といったエネルギー源イオンを材料の中で自在にあやつることができれば、そのイオンの移動を介して水素の製造から発電に至る一連の石油代替エネルギーシステムの確立が可能となります。
本若手プロジェクト研究では、既成概念にとらわれない若い発想の基に、エネルギー源イオンを目的に応じてコントロールできるセラミックス材料を作製し簡単に水素ガスをつくるシステムと燃料電池による効率的発電に役立てることをめざします。 →研究成果報告書
【細胞反応を制御する新規生体材料の創製】
骨などを対象とした硬組織再建用材料に求められる機能の一つとして「骨形成を担う細胞の活性化」が挙げられます。
ある種のタンパクや微量イオンを担持させることで、細胞への積極的な活性化効果を材料自体に付与し、細胞の反応性を制御可能とする新しい生体材料の開発が望まれています。
→研究成果報告書
【場の応答性を高めたエンジニアードエレクトロニクス材料の創製】
欧州の「RoHS」「ELV」に、代表される環境規制や希少元素使用制限に関する法律が施行される中、既存のエレクトロニクス材料は元より次世代材料開発においてもその対応が急務となっています。
「有害元素」と「機能」は、相反する傾向があります。一般的には、概ね平均的な両条件を満たす材料の開発に留まっているのが現状です。 本プロジェクトでは、無害な環境調和材料を用いて、なお且つ次世代革新的デバイスのデザインルールを包括した新機能材料の開発を行います。
→研究成果報告書
【結晶・電子・磁気構造解析に基づいた新規電子・磁気材料の開発】
近年の材料解析技術の発展により、高分解能での構造解析や局所組成・状態分析、高感度物性測定などが可能になってきており、先端材料の解析に適用されてきています。本プロジェクトでは、これまで十分でなかった「開発・合成」と 「評価・解析」の連携に重きを置き、新規機能性材料の開発に役立てます。 →研究成果報告書
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  • 国際ネットワーク形成に向けた次世代セラミックス科学若手研究者育成プログラム
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  • 頭脳循環を活性化する若手研究者海外派遣プログラム
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